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EDへの理解を深めるため、まずは正常な勃起がどのようにして起こるのか理解しておきましょう。
刺激や想像によって性的な興奮が生じると、勃起を促す信号が脳から発信され、脊髄などを介して陰茎へ伝わります。信号が陰茎に達すると一連の反応が起こり、最終的に陰茎の海綿体が弛緩してそこに大量の血液が流れ込みます。この血液の圧力によって陰茎が膨張し硬くなるのが勃起という現象です(※1)。
脳から陰茎にまでおよぶ複雑な働きのどこかに不具合があると、性的興奮はあっても十分な勃起が起こらないという症状(ED)が発生します。心理的な要因のせいで信号がスムーズに脳から送り出されなかったり、神経伝達に滞りがあったり、血管や血液の不具合で血流が悪くなったりと、EDにはさまざまな要因が絡んでいるのです。
EDへの理解を深めるため、まずは正常な勃起がどのようにして起こるのか理解しておきましょう。
心理的な原因で発症するEDを「心因性ED」、体の不具合(神経系や血管などの問題)で発症するEDを「器質性ED」と呼びます。心身両方の原因があると考えられるEDは「混合性ED」と分類します。これらとは趣を異にするのが「薬剤性ED」で、服用した薬の副作用で一時的に勃起が起こりにくくなります(※1)。
精神的不安やプレッシャー、うつ症状などがEDと関係することが知られています。EDの大半は心理的な原因で起こると考えられていた時代もありましたが、現在ではむしろ器質性EDや混合性EDに該当する例がほとんどであることが分かっています(※2)。
EDの多くは身体的な問題がベースにあり、そこに心理的な問題が加わって状況が悪化したり、逆にEDによって心理的な問題が生じたりするのが一般的とされます(※3)。身体的な原因が目立たず(または発見できず)、心理的な要因が表立っているタイプが心因性EDと分類されることになるわけです。
以前ほど陰茎が硬くならなかったり、思うように勃起が起こらないことが繰り返されたりすると、次の機会にもまたそうなるのではないかと心配になり、強い不安や自信低下を引き起こす場合があります。こうしたことはED悪化のきっかけになる恐れがあります。
強い不安があると陰茎海綿体が弛緩しにくくなると言われています。また、セックスに対する積極性を失ったり、行為中に勃起の質ばかり気にしてしまったりすることで、ますます勃起しにくい状態に自分を追いつめることもあります。こうした悪循環はEDでよく見られる現象です(※4)。
パートナーとの関係についても同様のことが言えます。EDの症状がパートナー間に溝を作り、これがまたEDを進行させてしまうという悪循環です。
うつ症状がED悪化の要因となり、逆にEDがうつ症状の引き金となることも知られています。ED治療薬でEDの症状が改善するとうつ症状も一緒に改善することがよくあります(※5)。
血管や神経、男性ホルモンなどの身体的な問題が主な原因となって発症するのが器質性EDです(※5)。
肥満、動脈硬化、生活習慣病(高血圧症や糖尿病)、心血管疾患、慢性腎臓病などがEDのリスクを高めることが知られています。これらは血管や神経の働きに悪い影響を与え、その結果EDを引き起こしたり悪化させたりするのです。加齢や運動不足・喫煙などの生活習慣はこうした疾患につながり、ひいてはEDの要因となります。
パーキンソン病や多系統萎縮症などの神経疾患でもEDの併発がよく見られます。大きなけがや手術で血管や神経が傷つき、それがもとでEDが発症するケースもあります。一説によると、スポーツ自転車でよくサイクリングをする人はEDを発症しやすいとされます。陰部の動脈と神経がサドルで圧迫されて傷つくのが原因です。
テストステロン(男性ホルモンの一種)の減少もEDの要因とされます。テストステロン値の低下はメタボリックシンドロームや糖尿病のリスクにもなることが知られています。
先ほども述べたように、EDの大半は心理的な要因と身体的な要因が重なって発症したり悪化したりしています。つまり、ほとんどの場合が混合性EDと言えるのです。何らかの身体的な症状や病気があり、そこに心理的な問題が合わさってEDの症状を呈するのが典型的です。
現在のED治療は治療薬(バイアグラ、レビトラ、シアリス)の服用が中心です。治療薬で勃起力が回復すると、それに伴って心理的な問題も軽くなるという効果が期待できます。
薬の副作用で起こるEDが薬剤性EDです。以下のような薬でEDの症状が生じる場合があることが知られています。
中枢神経に作用する薬剤 | 解熱、消炎鎮痛剤、抗不安薬、抗うつ薬、抗けいれん薬、抗精神病薬、睡眠薬を含む向精神薬 |
末梢神経に作用する薬剤 | 筋弛緩薬、鎮けい薬、麻酔薬、抗コリン薬 |
循環器系に作用する薬剤 | 不整脈治療薬、利尿剤、降圧剤、血管拡張剤、高脂血症用剤 |
消化管に作用する薬剤 | 消化性潰瘍治療薬、麻酔薬、抗コリン薬、鎮けい薬 |
※出典:日本新薬株式会社「EDの原因とタイプ」(※1)
EDは加齢と大いに関係しており、一般的に年齢が高くなればなるほど発症しやすい病気です。しかし20代、30代で発症することもあり、若い世代ほど大きな悩みを抱えやすいという実情があります(※6)。EDの年代別の特徴をまとめてみます。
20代~40代半ばまでは動脈硬化や生活習慣病などの身体的な問題よりも心理的な要因が目立ち、心因性EDに該当する例が多いというのが通説です(※1)。
自分の体、とくに性器についての自己評価(セルフイメージ)の悪さが、若年層のEDの要因になるという研究もあります(※4)。自分の体のことで過度に気に病んでいると、セックスに積極的になれなかったり最中に気がそがれたりしていまい、勃起の質に悪影響を与えます。そして勃起の失敗がさらにセルフイメージを悪くするという悪循環に陥るのです。
しかし最近の研究によると、若い世代のED患者にも肥満や高血圧、高血糖、テストステロン値低下などの身体的な問題が見られる場合が多いことがわかってきています(※4)。ED患者は将来的に生活習慣病や心血管疾患を発症するリスクが高いとも言えます。早期に問題に気づいて生活習慣を変えれば、ED症状の改善とともに将来の病気を予防する効果も期待できるのです。
年齢が進むにつれ動脈硬化などの加齢の影響が大きくなり、生活習慣病にかかる人も増えます。50代以降では心理的な要因よりも身体的な要因が強くなるのが一般的と言われています(※1)。
50代以降はテストステロン値がとくに低下し、LOH症候群(男性更年期障害)に該当する人も増加していきます。LOH症候群では筋力や認知機能の低下、うつ症状、EDや射精障害など、心と体にわたる広範な症状が発生します(※7)。
以上に紹介したとおり、EDには心身のさまざまな要因が関わっており、複数の要因が相互に絡まり合っているのが通例です。服薬や生活習慣改善によって複数の問題が軽快することがあり、将来的な発病リスクの低減にもつながります。医師と相談しながら心身の現状を把握し、ぜひ自分に合った対策を見つけてください。
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