中折れはなぜ起こる？原因と対策を徹底解説

性的刺激によって脳が興奮すると、勃起を促す信号が陰茎に送られます。信号が陰茎付近に達すると、陰茎海綿体に向けてNO（一酸化窒素）が放出されます。NOに反応して、陰茎海綿体の中でcGMPという分子が増えます。

陰茎海綿体は陰茎の中身の大部分を占めるスポンジ状の組織で、スポンジの空洞の中を常に血液が流れています。普段は、動脈から流れ込む血液と静脈へ流れ出す血液がつりあっており、流れ込んだ分だけ流れ出ていくようになっています。

NOの働きでcGMPが増えると動脈が緩み、より多くの血液が流れ込みます。それと同時に、静脈への出口が狭まって、流出する血液が少なくなります。蛇口が大きく開いて排出口が狭まったような状態です。

その結果、陰茎海綿体は血液で充満して膨らみます。これが勃起した状態です。

陰茎海綿体にはcGMPを分解する働きを持った分子（PDE5）が存在しており、増えたcGMPは徐々にPDE5に分解されて減少していきます。

cGMPが持続的に作られている間や、PDE5による分解がまだあまり進んでいない間は、陰茎海綿体が血で充満し、勃起状態が続きます。分解が進むにつれて血液の流入量が減り、流出量が増え、やがて陰茎は通常の状態に戻ります。[1]

勃起がスムーズに起こり、十分に持続するためには、性的興奮に集中できる心理状態であることが重要です。心理的な問題があると、勃起の妨げになることがあります。

脳からの信号を陰茎に伝える経路や、勃起に必要な物質を作り出すしくみに問題があると、cGMPがあまり生成されなかったり、性行為の間に生成が止まってしまったりします。

ある程度cGMPが生成されれば、とりあえずは勃起します。しかし、cGMP
が十分に作られない状態ではPDE5による分解が短い間に進んでしまい、その結果、セックスの途中でペニスが萎える「中折れ」が発生することになります。

陰茎海綿体に血液を送り込む動脈に問題があると、cGMPが作られても血流があまり増えず、陰茎海綿体に血液が充満しにくくなります。[2]

血管の問題が重度でなければ、勃起する程度には血液がたまりますが、長くは続かず、中折れが生じます。

動脈の問題として代表的なのは動脈硬化です。加齢や肥満、高血圧、生活習慣病、喫煙などが動脈硬化の要因となり、中折れにつながります。

また、静脈に異常があって血液の流出が多すぎる（速すぎる）場合にも、中折れが発生することがあります。

うつ病などの精神疾患が勃起のスムーズな進行や持続を妨げ、中折れの原因になることがあります。[3]

また、セックスに対するプレッシャーや生活上のストレスが一時的に中折れを発生させることもあります。プレッシャーやストレスが頻繁に生じると、中折れが起こる機会も増えます。

中折れしたという経験自体がさらなるプレッシャーやストレスを生み、状態を悪化させることもあります。

服用している薬剤が勃起に関わる神経や血管に影響を与え、中折れを引き起こす例もあります。[3]

中折れなどのED症状は単一の要因で生じることはまれで、上で述べたような要因がいくつか重なって発症しているケースが大半です。[3]

治療の際には、中折れにどのような要因が絡んでいるのかを診断し、主要な原因に重点を置いて対策を考えていきます。

中折れなどのED症状に対しては、PED5阻害薬と呼ばれる薬剤（バイアグラ、レビトラ、シアリスと、それらのジェネリック）の服用が最も一般的な治療法です。

PED5阻害薬を服用すると、薬が効いている間、陰茎海綿体の中のPDE5が減少します。すると、cGMPがなかなか分解されなくなり、勃起が持続しやすくなります。

精力剤・サプリメントのなかには、勃起に関係する神経・血管の働きを改善する効果をうたったものがありますが、ED症状を治すほどの効果は期待できません。

肥満、高血圧、喫煙などが中折れの要因になっていると考えられる場合、食生活改善、運動、禁煙などもある程度の効果が期待できます。ただし、それだけで中折れしなくなるとまでは行かないでしょう。

生活習慣改善はED症状の進行を防ぐ（遅らせる）効果も期待できますので、ED治療薬の服用と並行して行っていくのがよいと思われます。

うつ病などの精神疾患が主な要因となっている場合、精神疾患の治療を第一に考える必要があります。

軽度の精神疾患や心理的な問題がEDの要因のひとつと考えられる場合、ED治療薬の服用と心理療法を併用するのが効果的です。[3]

ED治療薬（PDE5阻害薬）は神経・血管・心理のどれが原因であっても効くことが多いのですが、十分な効果が得られない患者さんもいます。

そうした場合、まずはED治療薬の使用法をチェックします。

ED治療薬は飲んでから効果が現れるまでの時間や効果の持続時間が種類によって異なり、服用前の食事に注意が必要なものもあります。患者さんの服用方法に問題があった場合、あらためて適切な方法で服用してもらい、効果の有無を確かめます。

ED治療薬は「媚薬」ではないので、飲んだだけで興奮して勃起するということはなく、勃起には性的刺激が必要です。このことを知らず、効かないと勘違いする方もいます。

また、初めの数回は飲んでも効果が得られないケースもあるため、1回であきらめず、何度か試してみることが必要です。

こうしたことをチェックした上で、ED治療薬には効果が期待できないと判断された場合、陰茎や血管などの状態を精密に調べて原因を特定し、外科的な方法（血管手術など）で治療します。[4]