トリコモナスの治療と放置リスクについて

トリコモナスとよばれる、0.1㎜程度の原虫に感染することが原因で発症します。トリコモナスに感染すると、膣や尿道、膀胱、前立腺、精嚢に寄生し、炎症を起こします。そして、例えば性行為の時に、前立腺や精嚢に住みついたトリコモナスが精液を介してパートナーに感染を起こします。トリコモナスにかからないようにするためには、コンドームを正しく使用し、不特定多数との性行為は避けた方がよいでしょう。また、女性が生理中の場合には膣内もデリケートな状態で、トリコモナスが増えやすいといわれているため、生理中の接触は控えた方がよいです。通常のセックスに比べると、うつる確率は低いもののキスやオーラルセックスでも感染する場合があります。性行為以外では、タオルを共有することによってうつることもあるので、パートナーや家族と同じタオルを使わないようにした方がよいでしょう。性行為以外でもうつるので、家族の誰かがトリコモナスに感染していれば、子供でもうつってしまう可能性があります。

トリコモナスは、治療をしなければ治ることはありません。特に男性の場合には、感染しても約半数が無症状ともいわれており、気づかないうちにトリコモナスによる炎症が拡大している可能性があります。例えば、トリコモナスを放置していて精巣上体炎になると、陰嚢の腫れや痛み、発熱などの症状が出ます。精巣上体は精子の通り道にある器官なので、トリコモナスによって炎症が起きると精子の通り道がつまり、不妊症の原因になります。もし、トリコモナスを放置して前立腺炎になると、頻尿、排尿困難、残尿感、会陰部の痛み、射精痛などの症状が起きます。また、トリコモナスに感染しているのに放置したまま性行為をすると、パートナーにうつしてしまうリスクもあります。

女性の場合には、トリコモナスを放置していると不妊症や早産、流産につながるといわれています。

コンドームを正しく使うことによって、性行為でトリコモナスに感染することを予防できます。ただし、トリコモナスはコンドームだけでは予防しきれないこともあるので注意が必要です。

トリコモナスの治療では、メトロニダゾールとよばれる内服薬を7～10日程度飲みます。女性の場合には、膣錠を使用する場合もあります。パートナーも同時に治療を行わないと、ピンポン感染といってお互いにまたトリコモナスをうつし合ってしまう可能性があります。また、パートナーからの再感染の他にも、治療をしたのに体の違う場所に残っていたトリコモナスに再び感染してしまったり、治療してもトリコモナスが残っていたりして再感染してしまうことがあるので注意が必要です。治療薬の内服中に注意すべきことは、飲酒をしないことと、性行為を避けることです。なぜ飲酒をしてはいけないかというと、メトロニダゾールがアルコールの分解を抑制するので、頭痛や嘔吐、顔面紅潮などの症状が強く出る可能性があるからです。また、メトロニダゾールは白血球減少やカンジダとの重複感染を引き起こすことがあります。
治療薬によりトリコモナスが治癒していると判断するためには、自覚症状の消失とトリコモナス原虫の消失が必要です。女性の場合には、体の中にトリコモナスが残っていて、月経中に増殖する可能性があるため、次回の月経後にもトリコモナスの検査をした方がよいといわれています。トリコモナス原虫の消失が確認されるまでは、家庭内でもタオルの共有は避け、トイレや浴槽の使用時にも注意し、家族への感染がおこらないように配慮しましょう。