【医師監修】男性の性病・症状・種類を徹底解説〜こんな症状があれば相談〜

排尿時に痛みが生じる場合には尿道炎が起きている可能性があります。尿道炎は排尿痛、尿道痛と尿道分泌物を主な症状とする疾患です。性病における尿道炎では淋菌性尿道炎と非淋菌性尿道炎に分類されます。非淋菌性尿道炎の原因菌としてはクラミジアが多く、クラミジア性尿道炎と非クラミジア性尿道炎にさらに細かく分類されます。
淋菌は性感染症の中でもクラミジアと共に頻度の高い感染症です。淋菌による尿道炎では感染後2〜7日後の潜伏期ののちに排尿痛と膿を含んだ尿道分泌物が出現します。

クラミジアは感染後1〜3週間で発症するとされていますが、自覚症状があらわれないことももあります。淋菌性尿道炎に比べると排尿痛が軽い場合が多く、尿道の痒みを感じる場合が多いです。尿道分泌物はサラサラだったり、ネバついていたりすることもありますが、分泌量は少なめです。

性器周辺に認められる症状

性病の中には症状が進行することで潰瘍やびらんがあらわれるものがあります。皮膚や粘膜などが何らかの原因で傷つけられ、えぐられた状態やただれた状態のなかで粘膜下層まで傷が深い場合には「潰瘍」とよばれ、粘膜下層まで傷が達していない状態を「びらん」とよびます。潰瘍やびらんを起こす性病には性器ヘルペス 、梅毒、カンジダなどが存在します。
性器ヘルペスは感染してから2〜10日間潜伏期間後に性器に浅い潰瘍や水泡があらわれます。神経を伝わって潜伏感染して何らかの刺激で再発することがあり、性器ヘルペス患者の6〜7割は再発例です。
梅毒では、感染後10〜30日で感染部位に生じた硬い丘疹（1cm以下の皮膚に隆起）が潰瘍化します。痛みなどの自覚症状はあらわれないことが多いです。
性器カンジダは男性では症状があらわれることは少ないですが、亀頭に炎症やびらんがあらわれることがあります。

腫脹とは、炎症などが原因で腫れて膨らんでいる状態です。水分や血液などが過剰に溜まったり。増加したりすることで起きます。性病でも腫脹があらわれるものがあり、尖形コンジローマやヒト乳頭腫ウイルス16型などがあります。
尖形コンジローマは、ヒト乳頭腫ウイルスによって引き起こされる性病で潜伏期間も平均2.8ヶ月と長いことから感染機会を特定できないこともあります。潜伏期間が過ぎてから亀頭、陰茎にイボのようなものができます。たくさんのイボが融合して大きく腫れることもあります。

陰嚢に認められる症状

淋菌やクラミジアによる尿道炎を治療せずに放置すると尿道内の病原体が精巣へ移行して精巣上体炎を起こすことがあります。精巣上体炎を放置していると不妊の原因になることがあります。
淋菌性精巣上体炎では炎症症状が強くあらわれ、大きく腫れ上がったり、痛みがあらわれたり、発熱したりすることがあります。治療後に無精子症になる可能性もあるので注意が必要です。
クラミジア性精巣上体炎は、淋菌性精巣上体炎に比べると陰嚢の腫脹と疼痛、発熱が軽いことが多いです。

肛門に認められる症状

男性同性愛者のみならず異性間でも肛門性行を行うと肛門などに病変があらわれることがあります。肛門に症状があらわれる疾患には直腸炎があり、排便時に痛みや違和感を感じたり、便に膿や血液が混じったりすることがあります。
梅毒は肛門に無痛性の潰瘍があらわれ、症状が進行すると痛みの伴う潰瘍になり直腸にも炎症が起きます。
赤痢アメーバでは、肛門に痛みを感じることは少ないです。粘液状の血便や残便感などがあらわれることが多く、症状が進行するとアンチョビソースのような外見の悪臭の強い便が出ることがあります。
淋菌、単純ヘルペスで起きる直腸炎は排便時などに強い痛みが生じることがあります。単純ヘルペスでは肛門周囲の皮膚に水ぶくれや潰瘍が起きます。
サイトメガロウイルス感染による直腸炎は、免疫不全の患者さんに発症することが多く、HIVを感染している可能性があります。

口や喉周辺に認められる症状

性行動の多様化によってオーラルセックスを行うカップルも増えてきました。また、性的サービスでもオーラスセックスを行っていることから、性病が口や喉周辺に感染する患者さんも増えてきています。
梅毒では、感染後3週間でアズキ大のしこりが生じ、3ヶ月後には口腔内や喉周辺に炎症があらわれ、徐々に白く変化していきます。重症化すると舌や口蓋にゴムのような腫れが生じますが、日本ではほとんど見られません。
HIVでは初期症状として口腔症状があらわれることが多く、カンジダ症、HIV関連歯肉炎やドライマウスなど様々な症状があらわれます。カンジダ症は、舌や口腔内粘膜に白苔や白斑などがみられ、慢性化すると潰瘍などがみられることもあり、味を感じなくなったり、飲み込むことができなくなったり、痛みを感じたりします。
淋菌やクラミジアの咽頭感染ではほとんどの場合では無症状が多いですが、淋菌の一部の感染者は咽頭炎や扁桃炎が生じることがあり、クラミジアは上咽頭炎が生じることがあります。
単純ヘルペスは親から感染することもありますが、10代後半からは性的接触で感染することが増えます。初感染では口唇炎、歯肉口内炎、咽頭炎、扁桃炎を発症します。再発時には口唇炎など局所的な痛みと熱感があらわれることがあります。

眼の周辺に認められる症状

まれに眼にも性病の病原体が感染することがあります。性病と思って眼科に受診する患者さんが少ないため発見が遅くなることも多いです。結膜炎があらわれる性病はクラミジア、淋菌があり、治療しないと失明の原因になる可能性もあります。
クラミジアを原因とする結膜炎はトラコーマと区別され、約1週間の潜伏期間を経て、充血したり、目ヤニがでたり、まぶたが腫れたりします。
淋菌では、感染から1〜2日後に充血、クリーム状の膿を含んだ目ヤニ、まぶたの腫脹があらわれます。

梅毒性ぶどう膜炎は、虹彩、脈絡膜、網膜、視神経などに病変を生じ、視力低下や霧がかかったような見え方をすることがあります。
HIV感染症では、免疫不全を起こして健康な人では発症しないような感染症を引き起こすことがあり、眼部帯状疱疹やサイトメガロウイルス網膜炎など発症することがあります。これらの疾患は放置すると網膜剥離に進展することがあります。